傍若無人な意思疎通




「あっははははははははははははは!!!!はは、ひーっぐふふふふ」

「なんだお前。死にたいのか」

 同盟軍に現れたトランの英雄は、同盟軍魔法兵団長に会うなり腹を抱えて大爆笑し始めた。そこはルックの私室で、机に向かって仕事をしていたところいきなりベオークはやってきたのだった。

「ルック、面白い顔してるね!!」

「自覚はあるからとりあえず死ね」

「酷いよルック!でも休まないと駄目だよ〜。だからそんな、面白い、顔に…ぶふっ」

 言っている途中でまた面白くなったのか、声を出さないように肩を震わせてベオークは笑う。

 だか、それほどルックは面白い顔…もとい、酷い顔色をしていた。目の下にはくっきりと大きく隈ができ、二重だった瞼は四重になっている。髪の毛はどうにか項のあたりで縛ってあり、サイドからは長さが足りずに零れた髪の毛が垂れている。艶やかだったそれは今はない。

「もの凄い疲れてるでしょ?いつもなら、もう切り裂きかエルボーが飛んできてるし」

「こちらと三日目の完徹中だ。忙しいんだからお前の相手してる暇はないんだよ。帰れ似非英雄」

「だから駄目だって!休もう休もう」

「お前みたいに年がら年中暇じゃないんだよこの無職が!」

「ひっ、酷い…!僕だって頑張ってチンチロリンやポーカーで稼いでるのに!」

「ふん。どうせいかさまだろ」

「見抜けない方が悪いんだよ!」

「もうわかったから、本当に忙しいんだ。帰れクズ」

 ルックが一方的にいっているように見えるが、均衡は保たれていた。どちらも引かない。

 ベオークは珍しくも目をつり上げ、眉間にしわを寄せ真剣な面持ちでルックを見た。

「俺が休めと言っているんだ。いいから寝ろ!」

 その言いにルックは目を丸くしてベオークを見つめた。暫くするとゆるゆると瞼を閉じ、開いた。

「ぐはぁっっ!!!」

「ふざけんなこの英雄風情がぁぁぁ!!!」

 ベオークはルックに、その痩身からは想像も付かないような力でアッパーを喰らった。勢いは死なず、天井に頭をぶつけて第二撃をもらい地に伏せた。

「む…無念…」

「はっ!僕に指図するなんてお前には不可能だね!」

「る、ルック…そこは100万年早いって言う所だよ…」

「100万年経とうが無理だよ」

「酷いやルック…さすが、この僕が見込んだ(愛しい)人……がっ」

 ベオークは腹部を蹴られ床を転がった。

「今よけいなことを付け加えただろう」

「き、気のせい………じゃないですごめんなさい許して」

「許さないよ」

 ルックは言うと、ベオークの方に向かって歩いてくる。

「ぐえっ」

 実際は、ベオークの奥にある扉を目指していたのであった。途中にベオークという障害物を踏みつけて。

「罰として、あんたはそこの書類を片づけておくこと。僕隣で寝てるから終わったら起こせよ」

「はぁーい」

 バタン。閉められた扉を見つめて、ベオークは立ち上がる。服に付いた汚れを払い、ルックが先程まで座っていた椅子に腰を落ち着けた。ペンを手に取り、書類を消化し始める。

「ふふふ。やっぱルックは可愛いなぁ」

 思わず呟いて、はっとして周りを見渡す。どうやら切り裂きもエルボーもアッパーも飛んでは来ないようだ。ほっとして、ベオークは止めた手を動かし出した。


















冒頭を思いついたので20分くらいで書き上げました。
おかげで短いですが。

ルックはベオークを心底ウザイと思っているし馬鹿ににしてますが、
能力は使えると思っていますし、結構気に入っているんですよ。きっと。
ベオークがしつこいので慣れただけかもしれませんが。
…というか、結構ルックひどいですね。腹部を蹴られて床を転がったって…
酷いねルック!(笑)(やらせてるのはお前だ)