Ruu様が配布なされているお題、
「依存し合う恋人同士のお題」
をお借りしました。

配布元はこちら



□ 愛なんかなくたっていい。あなたがそこに居てくれるなら

 あなたが好きです。

 そんな陳腐なコトバ並べても、私の想いは欠片も表せない。

 あなたの心は温かい。

 でもわかってる。手に入れられる訳がないこと。

 貴方の隣を私に下さい。

 本当に欲しいものは何一つくれないけれど、これだけは、ここだけは、どうしても譲れない。

 愛などなくても構いません。

 でもどうか、傍にだけは、居させて下さい。



□ 恋なんてしなくていい。ただそばに居られれば何も不満はない

 私は別に、あいつに恋なんてしてないし、愛なんてのは断じて友愛しかない。

 ただ、一緒にいるのはそりゃ楽しい。ずっと共にいたのだし、気も合うのだから当然だ。

 でも。いいや、だから。

 あいつが誰と連もうと、私はそこに入っていけたし、相手も楽しく笑ってた。

 でも駄目だ。

 あいつが誰と連もうと構いやしない。

 でも誰かとつき合うのだけは絶対ダメなのだ。

 だって入れない。

 あいつと共に歩んできたのは私だ。私なんだ。それをぽっと湧いて出たような女なんかに道を譲れるはずもない。

 あいつは私といるのが普通で、当たり前なんだ。

 これは恋じゃない。愛じゃない。

 でもあいつの傍にいるのは私だ。私だけでいいのだ。



□ 愛でも恋でもなく、貪欲にお互いを求め、縛る、何かなのだろう

 ベッドの中、体を丸め寄り添っている二人の姿。互い酷似した容貌をしている。

 目こそつぶっているが眠ってはおらず、指を絡ませていた。

 一人がのそりと起き上がると、もう一人が間を空けずにそれに続く。立ち上がった方が、もう一人が立つのを手伝う。

 手を繋ぎそのままソファーへと腰を下ろす。繋がれた手はそのままだ。

 コツと頭をくっつけて、また目を瞑る。

 存在を確認し合うように。他を排斥し、互いだけをこの場に在らせ。心臓が絡み合うように。

 紙の鎖で雁字搦め。

 一歩出れば切れてしまうから、出ないように出さないように。

 きつくきつく、手を取り合って。



□ 束縛したい。

 手を出して、片方を君は僕の右手へ。

 手を出して、片方を僕は君の左手へ。

 繋がれた糸。細く、細く、今にも切れてしまいそう。

 それを幾重にも巻き付けて、取れないように。取れてしまわないように。

 僕等は互いを束縛し合う。

 でも、どれだけ巻き付けようとも互いを結ぶ糸は儚くて。

 ぷつん。

 と、僕と君を絶ってしまうのではないかと不安になる。

 糸は長いし、僕等は離れていることも多いから。

 誰かに、何かに。切られてしまうかも知れない。

 僕と君が、糸の長さを忘れてしまい、離れて、離れて、引きちぎられるかも知れない。

 もしもそうなったなら、きっと、僕等は二度と会えないのだろう。

 だから、どうか忘れないで。



□ 君のすべてをくれないか?

「君のすべてをくれないか?」

「私があなたにあげられるものは沢山あるわ。例えば、この鼻水まみれのティッシュとか、オイルの切れた100円ライターとか、あなたへの罵倒の言葉とか、そこのゴミを出しに出しにいける権利とか」

「もっといいものが欲しいな。君を抱きしめる権利とか、君にキスする権利とか、君を抱ける権…嘘だよ。だから包丁をしまって。そして、君に愛の言葉をもらう権利とか」

「アイシテルワー」

「ありがとう。でも果てしなく切なくなるのはどうしてかな」

「発した言葉の意味に感情がまるで伴わないからよ」

「言いますか」

「言うわよ。つけ上がられてもウザイじゃない」

「…君の愛をくれないか?」

「じゃあ、ゴミ捨ててきて。たまってるの」

「えー…」

「行ってきたら頭撫でてあげるわよ」

「えーー…」

「じゃあ行ってらっしゃい」

「はい」



□ 支配したい。

 お願いと、頼んだのなら。

 君は僕に所有されることを了承してくれるだろうか。

「嫌よ。ふざけるのは大概にしなさい」

 思った通りの反応に、僕はどうしようかなと思った。


 お願いと、頼んだのなら。

 貴方は私に所有されることを了承してくれるのかしら。

「ごめんね。君と一緒にいたいとは思うのだけれど」

 思った通りの反応に、私はどうしようかなと思った。


お互いに、支配したいのだから。



□ すべては支配すること。すべては支配されること。


「貴方が好きです全てを下さい」

「あげます」

「有り難う御座います」

「貴女が好きです全てを下さい」

「あげます」

「有り難う御座います」

「ではここでずっと暮らしましょう」

「それはとてもいいですね。でも貴女は家に執着しないで下さい」

「はい」

「では庭に大きな花壇を作りましょう。綺麗に咲くことでしょう」

「それはとてもいいですね。でも貴方は花に執着しないで下さい」

「はい」

「私だけに執着して下さい」

「僕だけに執着して下さい」

「もちろんです」

「僕もです」



□ あなたがいないと私は水溜まりのようにひからびてしまう

 貴方が好きよ。

 それはいつも、何気なくかわされていた言葉であって、決して別れを切り出したものではなかった。

 だけれども、彼は別れを切り出した。他に好きな女が居るのだと。

 私はとても哀しかったけれど、彼を思って別れを決意しました。

 互いさようならと告げて、二人で暮らした家に二度と戻ることはなかった。

 今私は彼と会うことなく、彼がいないと言うこと以外変わらない生活を送っていた。

 今日もそんな日で、会社から家に帰ろうと言うところ。でも視界には彼と、私の知らない女の人。

 彼は私に気付くこともなく、その女の肩を抱き唇を寄せる。

 ポロポロと、次第そんな形容では足りないくらいに涙は止め処なく溢れ続け、彼の幸せそうな姿を覆った掌に溜まる。

 こんなにも、私は貴方が好きで。今でも女々しく貴方を想い。苦しくて仕方がないのだ。

 涙の水たまりに溺れながらも、私の心は干からびていた。



□ この体がくっついて、一人になってしまえばいい

「体なんて邪魔なだけよね」

「そうかな。体は必要だと思うな」

 一寸の後に互い顔を見合わせて、数秒そうしていた。先に口を開いたのは女の方で、眉間には数本の皺が刻まれていた。

「嫌ね、精神だけなら全て触れ合うことができるのに。体なんて何に使うのよ」

「何って君、男にそれを聞くのかい」

「もう!俗物なんだから!ボディじゃなくメンタルで仲良くしましょうよ」

「そうは言うけれどね。肉欲は男の本能だし、子孫繁栄のためにも必要なことじゃないか」

「全てが精神体なら、きっと体を必要としない子孫繁栄の道があるはずよ!」

 なんて夢見がち、とは思っても言わない。男は明後日を見つめてそれから女に向き合った。

「まぁ、実際体はあるわけだし仲良くしようじゃないか」

 ぱちくりと目を瞬かせ、それから顔を鹿目はしたけれど、女に抵抗は見られないのであった。



□ 解け合うほどに深く貪り合っても、決して混ざることはなく…

「殺して」

「嫌だよ。君こそ殺しておくれよ」

「どうしてよ」

「君こそどうしてだい」

「私は、貴方に食べて貰いたいの」

「それは僕だって同じさ」

「私の胃の府にかじりついて」

「脈打つ心臓をその口に入れて」

「殺してよ」

「嫌だってば」

「じゃあ、どうすればいいの」

「君が僕を殺せば良いよ」

「嫌よ」

「じゃあ、一緒に死のうか」

「だめ。一人になりたいの」

「そうか。じゃあ仕方ないよね」

「殺してよ」

「嫌だよ。ねぇ、食べ合おうよ」

「え?」

「死なずに、少しずつ食べていけば良いよ。腕を切り落として、次は足、肩、目」

「うーん」

「ね、そうしよう」

「私痛いのは嫌だわ」

「じゃあ、殺しておくれ」

「ええ、さようなら」