Ruu様が配布なされているお題、
「ちょっととぼけた十のお題」
をお借りしました。
配布元はこちら 。
□ シーツに襲われた
「ああ、助けておくれ」
「助けを求める君は、いったいどこにいるんだい」
「それがわからないんだ。真っ暗で、身動きも取れない。だけれど、君の声はすぐ傍らで聞こえる気がするなぁ」
「それじゃあこの、シーツに奇怪に巻き付かれているのが君なのかい?」
「おや、つつかないでおくれよ」
「ふむ。君の寝相はとても不思議だね。もう暫くそうしていてはどうだろう」
「できればすぐに助けて欲しいな。空気がちょっと足りないよ」
「まったく。君はシーツに襲われたのかい?それともシーツを襲ったのか」
「はは、真相はシーツのみが知るってね」
「君の記憶がない以上そうだよね」
「え、ちょっと。助けてはくれないのかい?」
「がんば」
□ 命の保障は無い
「いい?命の保証はしないわよ」
「それでも構わないさ」
「あなたは馬鹿だわ」
「ああ。そうかも知れないね」
「そんなにこれが欲しいの?」
「うん。とても欲しいな」
「本当に、死ぬかも知れないのよ」
「愛で乗り越えてみせるさ。だから」
「もう…病院に連絡しておくわ」
「有り難う。君の手料理、どうしても食べてみたかったんだ」
□ 断固拒否します
ちょっとくらいいいじゃないか。と君は手を伸ばす。
駄目です。と私はその手をたたき落とす。
けち。と君は訴える。
けちです。と私はそれを認める。
どうしてそんなに頑ななんだい。と君は憤慨する。
君に上げたら減るからです。と私はそれを背後に庇う。
それでは一枚だけ。と君は指を一本立てた。
一枚でも減るものは減ります。と私は却下した。
それを買ってきたのは僕じゃないか。と君はまだ強請る。
もらったのは私です。と私は取り合わない。
「ポテトチップス一枚くらいいいじゃないか」
「断固拒否します」
□ 今日の天気です
「本日の天気は晴れのち異常気象」
「はい?」
「午前中は春の兆しが気持ちよく過ごしやすいでしょう」
「はぁ」
「しかし午後からは太陽が爆発し、陽は二度と射さないでしょう。各地で地震・津波にご注意下さい。所により激しい雷雲を伴う大型ハリケーンが発生します。楽に死ねるようご注意下さい」
「救いねぇなぁ」
「そんなことないさ。だって本当じゃないもん」
「本当でたまるか」
「あーくそ!滅びちまえこんな世界!!」
「随分荒れてんなぁ。なんかあったのか?」
「ふん。お前には理解できない苦しみさ」
「まぁそう仰らず言ってみてよお代官様」
「テストで赤点とった」
「ふーん」
「おかげで追試だ」
「へー」
「だからお前と行くはずだった旅行もなしだ」
「え」
口 説き文句お断わり
これから僕は事実と反対のことを言います。
僕に告げられた君は高飛車に、僕より低い身長から見下した。
なによ。言ってごらんなさい?
そう、目が光る。
「僕はあなたが死ぬほど嫌いです」
「まぁ嬉しい」
「あなたの性格にほとほと愛想が尽きているようで、実はそうです」
「言うじゃない」
「一生僕に近づかないでくれると泣いて喜びます」
「じゃあそうしようかしら」
本当にそうされそうだなぁ。なんて思いながら、僕は続ける。
「どうか僕と結婚しないで下さい」
「……」
指輪をあなたの前にそっと差し出す。
あなたは目を細めて眉を寄せ、僕を睨み付ける。
「せこいマネしないで言えたら指輪を貰って上げても良いわよ」
僕は即座に言い直した。
□ 俺はシンデレラか
「このガラスの靴を落としたのは、君かい?」
「いいえクソ王子。俺はガラスの靴など所持しておりません」
「ではこのブーツを落としたのは、君かい?」
「いいえブタ王子。俺はブーツなど所持しておりません」
「ではこのサンダルを落としたのは、君かい?」
「いいえハエ王子。俺はサンダルなど所持しておりません」
「ではこの足袋を落としたのは、君かい?」
「いいえ死ね王子。俺は靴など落としてはおりません」
「嘘を言うものじゃない。なら君は、私に娶られない気かい」
「はいバカ王子。俺はシンデレラでもなければ女ですらありません」
「気にすることはない。法律など変えてしまえばいいじゃないか」
「いいえタコ王子。そのようなことをなさっても、俺には許嫁がおりますから」
「…………!!!」
「それではとり頭王子、ごきげんよう。二度と会うことのないように祈っております」
「ちょっと待っておくれよー!」
□ 殺意を感じるよな…
君のその笑顔が、僕はとっても恐いです。
「まぁどうかしたの?どこか脅えて見えるけれど」
「いえ、いえ。なんでもないと願っています」
「どうしたの、畏まって」
「そんなつもりはないのだよ」
「そう?私はてっきり、なにか、やましいことがあるのかと…?」
ああ、本当に。
恐いです。その笑顔が。
僕は今蛇に睨まれたカエルの心境です。
「いえ、いえ、そんなことはないと信じてい」
「私が知らないとでも思っているのかしら」
どきり。
僕の顔は平静を装いつつも、心臓はドクドクと脈打っている。
「一昨日はD組の子。昨日はA組の子」
ダラダラダラダラ。
滝のような汗が頬を伝う。
「明日は何処のクラスの子かしら?」
「あ、いやぁ、はははは…」
「笑ってんじゃないわよ」
「はい」
「誰が本命なの」
「あなたです」
「別れたくはない?」
「是非おつき合いを続けたいと」
なら、と。
「次はないわよ」
僕は彼女の視線だけで、死ぬかと思いました。
浮気はこれっきりにしよう!
□ え?味噌汁ってケチャップ入れません?
「はぁ?あなた何言ってるの」
「えぇ〜?入れないの?」
「入れるわけないでしょ」
「実家では常識だったけれどなぁ」
「変わった家だったのね」
「はぁ。世間知らずみたいで」
「みそ汁といったらマヨネーズじゃない」
「は?そんなもの入れるの?」
「常識よ。あなたホント田舎者ね」
「はぁ、すみません」
□ 自分の口には入らない
「やぁやぁ久しぶりじゃないか弟よ」
「やぁ久しぶりだね。勝手に人の家の合い鍵を作って侵入してくる傍若無人も懐かしいよ」
「所で弟よ。そのかき混ぜている鍋の中身はなんなんだい?」
「これは俗に言う毒薬さ。死ぬ様なのじゃないけれどね」
「ほう。なかなか弟もやるね。してそれをどうするんだい?」
「売るんだよ。これで結構儲かるんだから」
「ううむ。それでその毒の効果とやらは?」
「うんと、頭から花が生えて、その花が開いたら中から毛虫がわんさか出てくる」
「それは果たして毒薬なのかい?」
「うーんたぶんね」
「しかしなんとも愉快…もとい恐ろしそうな代物だ」
「だろう。嫌がらせをしたい中流階級の貴族に大人気で。」
「そんなものを作っていいのかね」
「いいんだよ。僕が飲むわけでもなし」
「はっはっは。それもそうだな弟よ」
□ よもや、自分の優しさに殺されるとは。
ちょっとした、親切だったんです。
「重そうだね、持ってあげるよ」
手いっぱいにノートを持っている女の子がいたから、親切でそう言ったんです。
その子は僕に感謝を告げて、半分を渡しました。
全部持ってもよかったのだけれど、それだと女の子が手持ちぶたさかな、と思ってそのままにしました。
隣のクラスだったので、届け終わると教室に入ろうとしました。
そしたら、僕の彼女が入り口に立ちふさがっていました。
にっこり笑うと彼女は、
「あたし以外の女に優しくしてんじゃないわよ!!」
ばっちーん
なんて可愛い平手打ちじゃなく、
ドゴォォッ
と僕の鳩尾に懇親の、そして会心の一撃をくれました。
吹っ飛んで壁に背をしたたか打ち付けた僕に、彼女は胸ぐらを掴んで言いました。
「あんたはあたしにだけ優しければいいのよ」
どうにか『はい』と告げると、彼女は笑って僕の頬にキスをしました。
ああ…嬉しいけれど、とりあえず。
ちょっと死にそう。