終章
「そう言えば、「人」がここに来たのは初めてって言っていたけど、人ではない何か、つまり他の創造主はここに来るの?」
翌日の早朝、自家製ハーブティーを淹れているアスファルに、朝食を食べながら僕は尋ねた。
「たまにね、百年に一回くらい」
「…
へー。で、他の創造主は何をしているの?」
「私と似たようなことをしているよ。この世界中のいろんな所で。水葬にするのはミスヴァラやその近郊だけではないからね。
「ふーん」
「まぁ変わり者もいてね。世界中を旅している奴も、何人かはいるんだ。ああ、私達の世界に帰ったのもいるな」
いろんな創造主がいるものだ。アスファルのように人と話すことなく孤島にいる創造主がいて、正反対に世界各地を旅行している創造主もいるなんて。
「それにしても…」
そう言いながら、アスファルの服装をしげしげと眺めた。
「なぁに?」
「威厳の欠片もない格好だなぁと思って。威厳を求める訳じゃないけれど、ねぇ」
アスファルは毎日似たような服装で過ごす。質素なシャツに、ジャージ。外に出れば大きな麦藁帽子に軍手。おまけにシャベル。
「まぁまぁ。ところで、エルヴィスどうするの?」
「ん?」
似たような科白を聞いた気がするなと思いながら、説明を求めた。
「死者の行方よりも知りたかった、世界ができた理由も知った訳だし。帰らないの?」
「ずっと、この島にいては駄目かな?」
「うん。だめだよ」
「ええっ?」
断られるとは微塵も思っていなかったのに、にっこり笑って拒否されてしまった。
すると諭すように。
「『子を思わぬ親がいぬように』。エルヴィスはもう一週間もここにいるんだ。親御さんが心配しているよ」
昨夜の科白を引用して言う。
「…
うん」
「いつでも来られるようにしてあげるから、そんなに落ち込まないで。これをあげる」
そう言って手渡されてのは、何の変哲もないもののように見えた。
「何これ。ドアのポスターと、鍵?」
重々しい扉が立体感を持ってそこにあった。普通のドアと同じ大きさの絵だ。鍵は豪華な南京錠にようだった。
「そのポスターに鍵を差し込んで開ければ、この家の玄関に出るから。ポスターは燃えないし破けないから大丈夫だよ。でも、きちんとドアを閉めてエルヴィスが一人で来ることが条件」
「一人?どうして。まぁ連れてくる気は微塵もないけどさ」
「誰もが君のように、知識を求めるだけではいられないんだよ」
それを聞いて、僕は頷いた。世界が気まぐれでできたなんて知って、落胆しないでいられる人がどれだけいるのか。僕にはわからない。
ところで、このドアのポスターと鍵。
「…
何でこんなことできるのさ」
「だってほら。『神様』だから?」
「柩の行方のその先に」は小6の時からネタがあったらしく、ワープロの方に残ってたりします。
その時は「柩の〜」ではなく「死者の〜」で、主人公が3人で子供でした。
原型はほとんど留めてないです。
それを暫く放置して、中3の時あたりに今の形になりました。
その後二度ほど加筆修正しましたが、どちらも仕方なくと言うか。
一度はワープロからパソコンに写す時、一度はフォルダが不慮の事故で全消去されたためでした。
フォルダが消えた時はかなり取り乱しましたね。結局復元はできませんでしたし。
その後へびはこまめにバックアップを作りまくるようになったとか。