第三章



「それにしても驚いたなぁ」

 エルヴィスはアスファルに案内され、アスファルが住んでいるという大きなログハウスのような家に招かれていた。そして椅子を勧められ、紅茶にクッキーまで出されていた。

「何がですか?」

「あ、敬語じゃなくていいよ。驚いたっていうのは、ヒトがここに来たことさ」


「…」

 アスファルが言ったのその科白に、エルヴィスは何か引っかかるものを感じた。

「ここにヒトが着たのは初めてなんだよ」

「え?」

「誰もここには来なかった。誰も気にしなかったんだよ。柩の行方を」

 エルヴィスは驚いていた。

 誰も来なかった?なら、この人は。

「ずっと、一人きりだったの?誰かが訪れることもなく、花だらけのこの島で」

 返事はなかった。ただ、悲しそうに微笑むだけで。エルヴィスには、それが答えのように思えた。

「ところで、君はどうするの?」

「あ、そうか」

「エルヴィスが知りたがっていた柩の行方は判った訳だし。帰るかい?帰り道なら教えてあげるけど…」

 エルヴィスがその言葉に眉を寄せて尋ねた。

「… 帰り道、あるんですか?」

「あるよ」

 にっこりと微笑むアスファル。

 エルヴィスはため息を吐いた後考え込んでしまい、会話が途切れた。聞こえるのはアスファルが紅茶を飲むお茶クッキーを食べる音だけ。

 数分後、エルヴィスが顔を上げた。

「アスファルがよければ、もう何日かここにいたいと思うんだけど…だめかな?」

「そんなことないよ」

 アスファルは笑顔で答えた。

「ようこそ。死者の眠る地へ」