第四章
僕がこの島に着て一週間が経った。一週間、僕は家の裏手にある畑の世話をしていた。
「なぜ…」
でも判ったことがある。僕が初めてアスファルに質問した答え。ここで何をしているのか。あの時はうやむやになってしまったが、いや、正しくはうやむやにされてしまったが、彼は死体を埋めている。ここに来る柩の数は日によって違うが多くて五つくらいだろうか。一つも来ない日もあった。たった一週間の統計では何とも言えない。柩を埋め終わると、一面の花畑に座り込み、日が暮れるまでボーっとしている。座り込む場所は適当なのか、バラバラだった。
「知ってる…の、かな」
僕が探し求めていた答えを。ずっと昔から、知りたかったことを。いや、何処かで確信していた。誰も知り得ない筈の答えを、知っていると。それは直感的な不確かなもので、だけれど僕にとっては確かなもので。
「はぁ…
戻るか」
日も暮れてきていたし、今日の畑仕事も終わった。
僕は立ち上がり、家に戻ることにした。
「やっぱまだいたか」
花畑の真ん中に。まだ日は暮れきっていないし、いてもおかしくない。
僕は家に入った。
アスファルが見ているとも知らず。
「遅くないか…?」
日が暮れるまでといっても、はっきり何時と決まっている訳ではなかった。十分や二十分の誤差はあったのだ。だが今日はもう一時間も経っている。
様子を見に行ってみよう。
アスファルはすぐに見つかった。昼にいた場所から動いていなかったのだ。ただし座っているのではなく、立っていた。麦藁帽子も被っていない。空に浮かぶ二つの満月を見つめるその姿は、神々しかった。
僕はアスファルに近付いていく。そして話しかけた。
呼びかけは、しなかった。
「貴方は誰ですか」