「君は、神様って信じてる?」

「それ、ここで聞くには変な質問だと思うな」

「そうかな?」

「うん。だってここ、協会だもの」

「はは、それで、どうなんだい」

「それはもちろん…」



信じているさ





 炎天下の元、人っ子一人見あたらない街道を進む二人の男。馬車に乗るでも馬に乗るでもなく、ただ黙々と歩く。

 二人の間に会話はなく、聞こえるのは地を踏みしめる音。

 ただ、ひたすら歩く。

 先程見えていた地平線の所まで来た頃、鈍色の髪の男が口を開いた。

「君は何処まで行くんだい?」

「それを訊いてどうするのさ」

 答えたのは金髪の子供。その顔は、左目を中心に頬までをきっちりと包帯で覆っていた。

「どうもしないけれど、宛ても知らずって云うのは精神的に疲れるものだよ」

「じゃあ着いてこなければいいじゃないか」

「ははははは。ああ、そういえば」

 鈍色の髪の男は、金髪の子供に恭しく頭を下げて尋ねた。

「私の名はディアーナ・ユル・セプテンリヌス。貴方の名を尋ねてもよろしいか?」

「…セイ・テトラヴィース・アルパ」

「ああ、良い名前だ。セイと呼ばせて貰ってもいいかい?」

「いいけどさ。えーとディアーナ?なんか女みたいな名前だね」

「はは、友人などはディーナと呼ぶ。セイもそう呼んでおくれ」

 軽く肩をすくめてセイはため息を吐く。

 再び横に並びディアーナは歩き出し、尋ねた。

「君は、神様って信じてる?」

「…それって、前にも訊かれたよ」

「ああ、昨日、協会で尋ねたね」

「僕はなんて答えた?」

「『信じているさ』と。それで、信じているのかい?」

 セイは声を上げて笑った。

歩みを止め、笑みのままで答える。

「…もちろん、信じてなんかないよ」

「だと思った」

 ディアーナもまた、にこやかに笑って言った。