『さぁ、協会へ行こう』

『嘘だ…!』

『本当にそれで』

『ごめんなさい、シスター』

『…誰っ?』

『いいえ、いいえ、そんなもの』

『彼の地へ』

『助け…て…』


『リィル!』


 目まぐるしく、全てが一瞬で通り過ぎた。

 暗闇の中見続けた悪夢。でもそれは過去。

 セイはゆっくりと、瞼を開けた。

「ああ、セイ。起きたかい。気分はどう?」

「…最悪、といいたいけれど、悪くない」

 閉じていた目を開けると、そこはまた暗闇で目を痛めることはなかった。寝転がっている状態なので、それだけで輝く星空が見える。

 体を起こすと、先程の貘もまだそこに姿があった。

「どうも。大変美味でしたぁよ、お前さんの夢」

 ぺろりと唇を舐め、ニヤリと笑う。セイはそれが気に入らない。

「なに、そう怒ってばかりいるもんじゃあありゃしませんて。今晩からぐっすり眠れるでしょうよ」

「…」

 貘の言うように、セイはずっと安らかに眠ることをできずにいた。浅い眠りに繰り返される悪夢。気分がいいのも、ぐっすりと休めたからに他ならない。

 黙ったままのセイに、ディアーナは手を伸ばす。

「旅はまだ続くのだし、そう気を張っているものではないよ。休息は必要さ」

 差し出された手を見て、視線を上げる。そこには優しげに微笑んでいるディアーナの顔。まったく、とため息を吐いて、セイはその手を取った。




 貘のせいで休んだ筈にも関わらず、宿屋に戻ったセイは布団にはいるなり眠ってしまった。

 翌日、目が覚めるとディアーナは既に起きていて、「おはよう」と笑った。

「…おはよう」

「よく眠れただろう?」

「…うん」

「では、行こうか」

「次は…風吹く大樹スギルリド」