昼休みになると俺はすぐに教室を出た。そのまま早足で屋上に向かう。あいつが、いるかも知れない。
しかし、俺の淡い期待を見事に裏切りあの男はいなかった。
「…おい。いないのか?」
消え方が尋常ではなかったし、始めた現れたときも気配がいきなり現れた。ならば、呼べば来るかも知れない…
「…ははっ、やってみるもんだな」
「…」
黒い装いに青白い顔が、消えたときと反対に空から滲み出るように現れた。
「俺、今日人殺すんだって?」
「そうだ」
何の感情も読みとれない声で男は言った。
「誰をだ?」
「それはお前次第」
「はぁ?」
「お前は人を殺す。しかしそれはお前の行動で誰かが決まる。わしにはまだ見えんがな」
見る…こいつは何なんだ?
「お前、予言者とかそう言う奴なのか?」
「さぁな。貴様には教えてやらん」
俺には?俺以外には言うのかよ。誰にも言わないならまだしも、俺だけってのは腹立つな。しかしどうしようもない。
「そうかよ。…
なぁ」
「ではな」
「あ、おい!」
まだ話は終わっていないぞ。呼びかけてたじゃないか。まだ聞きたいことが山ほどあるのに。
俺は誰を殺すんだ?
帰り道、俺は考えながら歩く。きっと家に閉じこもっていても、俺は抗うことができずに誰かを殺すのだろう。
嫌だな。俺は強くなんてない。殺すことも、殺した後の罪悪感にも耐えられない。
その時、携帯の着メロが鳴る。
メール?誰から…
上原 悠人
件名
本文 駅前集合!
抗うことができずに、殺すのだろう。