第一章
「アスファルー。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「ん?何だい」
あのポスターのドアから僕が来るようになって、アスファルは柩を埋めた後、家に戻るようになった。まだたまに、外に出っぱなしの時もあるけれど。
「この文字って何語?全く解らなくて…」
そう言って、外装は色褪せ題も読みとれない、すっかり黄ばんでしまった本を開いて見せた。
「…何処にあったんだい?」
「んーと、僕がその本を見てたら、知り合いのおばさんが『気に入ったんならあげる』って」
「そのヒトは、どうして…」
「祖母から貰ったんだって。その祖母も、祖母から貰ったらしいって」
黙ってしまったアスファル。渡した本の表紙を、ゆっくりと撫でる。
「これはね」
そう言って本を見つめる。古びた本は見る見るうちに新品同様へと変わっていった。
「私達の記録」
「地球創造の?」
「…そう」
目を伏せ、僕の言を肯定する。
「読んでみてはくれない…かな」
「読みたくは、ないね」
「なら僕が読んであげようか」
アスファルの予想通りの答えの後に、思いもよらない別の声。
「…レウロ」
「やぁ、アスファル」