第二章



「やぁ、アスファル」

「…久しぶりだね、レウロ」

 突然現れた深緑の髪の人、レウロに、アスファルは珍しく少し不機嫌に応えた。

「うん。本当に、久しぶりだ。アスファルがヒトを造って以来」

「今更私に、『何か用』?」

 今更。アスファルが「今更」という程昔に、何かあったのだろう。

 アスファルの含みのある言い方に、レウロも同じように含みを持たせて言う。

「フフッ、『いえ特に』?ただね、噂になってるから。僕も気になっただけ」

 僕のことか?

「…またか」

「あれ?なんだ。僕が一番じゃないんだね」

「ええ、ティトが来たよ」

「そ。ねぇ、噂の坊やは何て名前?」

 僕を振り返って言う。確かに、見た目は子供でも恐らくこの星より年上なのだろう。

 しかし坊やと言われるのは妙な気分だ。

「エルヴィスだよ。私達の存在を知る唯一のヒト」

 アスファルが答えた後、僕はレウロに尋ねた。

「貴方も、創造主?」

「う――ん。微妙」

 ニヤリと笑ってレウロは言う。

 その発言に、アスファルが補足する。

「レウロは、地球を造ることに参加しているけれど、何も造らなかったんだよ」

「え、なぜ?」

 嬉々として、僕の方に歩いてくるレウロ。

「必要がないと思ったからさ」

「造る、必要?それは…」

「あっはは。エルヴィスは噂通りに知りたがり」

 椅子に座っていたアスファルが、ガタ、と音を立てた。

「…アスファル?」

「柩が来たみたいだから、行って来るよ」

「いってらっしゃーい。ごゆっくり?」

 レウロが宙で指をクルクル回すと、ドアが開いた。アスファルは、いつもの麦藁帽子と軍手を持って外に出る。

「どうも」

 パタン

 ドアは静かに閉められた。