調査結果、後、始動



「無理だな」

 ニブルヘイム国王執務室。その座に座るシルフィードは、大きな机に書類を何枚も広げ、頬杖をつきながらピラとその中から一枚を取り上げる。

「これが嘘でなければ、俺等にはどうしようもない。フェイも同じじゃねぇの?」

 調査報告書。机に散らばった書面にはそう書かれている。

 シルフィードが手を上げるのも無理はない。そこには、ヴィグリードについて書かれていた。それによれば、日常的に科学では証明できない現象が起きているらしい。花壇に水をやるにも何か呟くだけ。それで水が降るのだから声も出ない。荷物を運ぶにも、運ぶ者の頭上を漂っているとか。数を上げればきりがなかったという。

「では、いかがなされるので?」

 机の前に立つ人物、アレンは尋ねた。

「めんどくせぇがまた書簡を書く」

「さようで」

「しかしなぁ。どうだかなぁ」





 一方、ヨーツンヘイムのフェレストも、また執務室にて側近のベアニスを前にしていた。

 机を見れば、散らかってはいないものの報告書があった。

「国民も使えるか…しかし、先の戦のような大がかりなものは使えないと見ていいだろう」

「何故で御座いますか?」

「勘だ」

「…そうで御座いますか」

 ベアニスは時々思う。この国王は、推理推測などしているのではなく直感だけで政治を行っているのではないかと。そうでないことは、フェレストのしたためた書類を一枚見れば分かるのだが時たま見せるこの一面が恐ろしい。

「しかし、いかがなされます」

 フェレストを伺うと、珍しくも顔をしかめ嫌そうに言い放った。

「あまりしたくはないが、書簡を書く」

 小さく聞こえた舌打ちに、ヨーツンヘイム三代目国王の認識を改めようかと真面目に考えているベアニスがいた。

「二十七年間、私は何を見てきたのでしょうか…」

 その呟きは、誰も知らない。







 二日後、両国に書簡が届いた。