再会



 ヴィグリード攻略について、貴国の助力を仰ぎたい。ついては、敵を欺くものとしその地にて会合を望む。承諾された場合、月が満ちた翌日正午、他の者多く行き交う噴水のある広場まで参られたし。


「どう思う?これ」

「そうですね、相手も行き詰まったんじゃないですか?」

 アレンは目を細め敵国からの書簡を眺めた。しかしその目に浮かぶのは、ややどうでも良さそうな面倒臭そうな感だ。

「なんか、適当だな」

「お言葉ですが、私にそれを聞かれてどうなさるのです。私が何を言おうが行くおつもりなのでしょう」

 アレンが言い終わらない内に、シルフィードは目をそらした。

 図星だ。

「まぁ、あれだ。その、うん」

「何で御座いますか。はっきり仰いなさい」

 はっきりと言わないシルフィードに、臣下のものとは思えないほど尊大かつ丁寧な口調で言い放った。
 地位の差のことなど何も言わず、それどころか苦い顔をし、脂汗をダラダラたらしてシルフィードはどうにか声を絞り出した。

「…行って来ます」

「初めからそう仰ればよろしいでしょうに。私も行きましょう。国王だけではどうにも不安です」

「…」




 特にすることがあるわけではなく、唯待つという行為をひたすら続ける。ベアニスは隣に鎮座するフェレストを見た。
 待つ以外にすることがないのは自分と同じ筈なのに、随分と真剣な面持ちだ。

「どうかなさったのですか?」

 待ち合わせ場所であるヴィグリード最大の噴水広場。時折跳ねる飛沫を頬や腕に感じながら、フェレストは答えた。

「何がだ?」

「いえ、真剣に何を見ていらっしゃるのかと」

「ああ、人間観察だ」

 それにベアニスは納得がいった。ヴィグリードの人々は、生活の中に不思議な力をごく当たり前に使うのだ。彼等のようにヴィグリードの外から来た者にとっては、見慣れない光景だ。

「何を勘違いしている。これは私の趣味だ」

「…そうで御座いますか」

 やはり、認識を改めるべきだとベアニスは確認した。

 と、その時。

「来た」

 フェレストの鋭い声がベアニスの耳に届いた。
 ベアニスが見ると、フェレスト同様庶民と同じ様な服を纏ったシルフィードが、冢宰のアレクを引き連れてこちらへと向かってくる。

 二人の視線が静かに交差する。




 幾歳ぶりの再会が、今、果たされる。