偽りは終わりを迎える。
本当でなくなったときに歪みは生まれ、
小さなそれは確実に、
みしり みしり
奇妙な音を立てながら。
やがて崩壊を迎えるのだ。
歪みへ一歩
包まれていた光りがフッと消えると、そこは元いた過去の洞窟で。剣は変わりなくそこに鎮座していた。
「てめぇっ!」
ビクトールは突然過去へと飛ばされた怒りから星辰剣に怒鳴りつける。それをラーグは制して、助力を求めた。
「夜の紋章。我々に力を貸してはもらえませんか」
「ふん。主等の手には余るだろうて」
「貴方の力が必要です」
「それはどうかわからんな」
ラーグは力を貸して欲しいと要求するが、星辰剣はどうにも渋っていた。
そのやりとりを見ていて、ルックはポツリと言った。
「…面倒臭いだけじゃないの?」
「…」
「……え?」
ルックに言われた一言に黙ってしまった星辰剣に、まさかと驚きの声を上げる。
星辰剣は、まるで口笛吹いて誤魔化しているような風だ。これが人の姿なら実際そうで、プラスして汗が光っていたことだろう。
「風の子よ。悟っても言うべき事とそうでない事があるだろう」
はぁ、と一つため息を吐いて、ルックは星辰剣に向かった。
「相手は吸血鬼だ」
「何?」
「あんたの管轄だろう。これは、言うべき事だ」
「それを先に言えばいいものを。仕方がない。手を貸してやろう」
一行が戦士の村に着くと、村人は村の中央にある広場に集まっていた。しかし様子がおかしい。皆武装し、ゾラックの声と思しきかけ声に、どんどん闘気と殺気が高まっていく。
「なんだ…?」
フリックの呟きも村人が上げ咆哮に掻き消される。ゾラックが村人を割って先頭に立ち、それに皆が続いた。
そこでやっとラーグ達の存在に気が付いたようで、声を掛けてきた。
「ラーグ殿!我等吸血鬼の根城に向かいます」
「急すぎます。何かあったんですか?」
「あやつめ、招待状なんぞ送って寄越したのです!」
「招待状?」
「結婚式のです…!今日日が暮れる頃始めるようです。それまでにテンガアールを取り戻さねばなりません。申し訳ありませんが、我々はもう行きますぞ」
止める間もなく、騎乗したゾラックは行ってしまった。蹄の駆ける音も既に遠い。
「まずいな、追いかけよう」
フリックの言に同意し、後を追った。
ネクロードの城の場所は知らなかったが、行軍の足跡を追うのは容易く門前で往生している戦士の村の者達に追いついた。
まさにドアを蹴破ろうとしていたところに、ネクロードが突如として現れた。現れた吸血鬼に襲いかかった数人が、周りを巻き込こみつつ吹き飛ばされる。
「せっかくの結婚式だというのに、何ですかその剣や防具。まるで似つかわしくないですね」
「冗談につき合ってる暇はない!我が娘テンガアールを返して貰うぞ!!」
「それはできませんねぇ」
言うとネクロードの姿は消え去った。
「ラーグ・マクドール。あなた方は招待して差し上げましょう。それまでその紋章、他の者に渡すことのないように願いたい」
脳内に響く声は紛れもなくネクロードのものだ。それが聞こえているのはラーグに限らず、その場にいる者全てに聞こえていたようだ。
「日が沈む頃、テンガアールは正式に我が花嫁となる。呉々も結婚式に遅れることのなきよう…」
それきり、声はしなかった。
「くそっ」
そう言って一人の戦士が扉へと近寄ったが、触れることすらできずに倒れてしまう。
「…我々は口惜しいが行けそうにありません。どうか、テンガアールをお願いします…!」
「はい」
扉に拒まれることなくそれを開けようとしたとき、ラーグを止める声が響いた。
「っ待って下さい!」
「君は…」
「ヒックス!何をしている。お前は…」
「僕は!っラーグさん、僕も連れていって下さい!テンガアールを助けたいんです」
ラーグはヒックスの目を見て、破顔した。その後扉を押し開いて、行こうかと告げた。
全てを照らす陽は、暖かな橙色だった。
吸血鬼は風の秘密を知っていた。
風は闇に、それを知られたくなかった。
どうして?
そう問われれば、風は答えないだろう。
なぜなら、風自身もその訳を知らないからだ。
吸血鬼は風の秘密の片鱗を闇に見せ、風はそれだけに留めた。
風はこれ以上の漏洩を恐れた。
闇はそれを知っていて、なお風のそれを知りたいと思った。
でも内で脅える風を見いだし、闇は追求をしなかった。
花嫁をさらった吸血鬼は、それを屠るものにひれ伏した。
風は、思い出したままだった。
逃げました。
だってもう時間がありません。
後2時間で明日ですよ。
明日から学校ですよ。
やっていないことが多すぎです。
それに戦闘シーンは書けません。
今回は上記のような理由と文才不足等のため短めです。
でも、星落ちるよりは長いんですよ!(だから何だ)
…でも、ワードで「破顔」が出なかったのには驚いた。