崩れる遺跡。ガラガラと音を立て、まるで僕の計画を表しているよう。

それでも、僕の心中は穏やかだ。沢山の命を犠牲にして尚、僕は運命を変えることはできなかった。でも、やっと終わることができる。

造り出されてから三十年と少し。ずっと灰色の世界を見てきた。見たくもない未来を紋章は見せ、それでもこの紛いものの命を壊すことを許さなかった。

消えたかった。世界を救うことより、何よりも望んだことだった。

自然と笑みが浮かぶ。身体が死へと真っ直ぐ向かっている。死ねることに安堵した。

…何だろう。崩れ行く遺跡。この間ヘの入口は既に閉ざされているのに、こちらに向かってくる紋章の気配。

この気配は。


この、紋章は…。


「ルック…!」

ああ。彼が来てしまった。

「…どうして…」

何故来てしまったの。

「ずっと探してて…とにかくソールイーターを…」

「やめてよ」

漸く死ねると云うのに。これを逃したら、きっともう死ねない。

僕を止めると判ってた。僕を生かそうとするのが判ってた。
だから何も言わずに隠してたのに。

「僕を…置いていくの…?」

「うん。ごめんね」


彼は僕を見て悲しそうな苦しそうな顔をする。

「もう…僕に、どうすれって云うの…」

声を出すのも、もうできなくなりそうだ。

「生きて。僕と生きて」

 ああ、なぜそんな酷なことを云うのか。これ以上、生きていたくなどないのに。

「君が何と言って僕を憎もうと、僕は、君を死なせない…!」

僕は目を見開く。
横たわる僕の側にしゃがみ込む彼の袖を掴み、弱々しくも起き上がろうとして失敗する。
慌てる彼を遮って、どうにか声を搾り出した。

「無理だよ。嫌だ」

死ぬ程の思いをしても、灰色の世界を見続けても、己の全てを嘆いて尚、零れることをしなかった涙が溢れた。
それに驚く彼に、僕は懇願した。

「死なせて…!」

「ルッ…ク…」

彼は目を固く閉じ、俯いたかと思うと僕を抱きしめた。

痛くて苦しくて、思わず小さく呻いたけれど、僕を放すことはしなかった。

不意に彼は僕を放し、そっと元通り横たえた。

そして、優しく悲しいキスをした。

「ごめんね…一緒に生きてあげられなくて」

「うん…」

僕を見て、彼は言った。

「ねぇルック…」

「な…に…?」

目を開けているのが辛い。抵抗しても、抗うことができずゆっくりと瞼が落ちて行く。


「君の魂を…くれないだろうか」


それは何とも、魅力的なことに思えた。

僕は瞼を完全に閉め、知らず微笑んでそれを承諾した。



それきり、僕の意識は途絶えた。






暖かい闇に運ばれて、僕は星の元へ還るのだろう。














発掘。いつ作ったのか。去年の夏〜今年の初めくらいの間かな。
パラレル。
ラーグ部屋でいいものかと思ったけど、一番しっくりきたので。
名前も出してないけれど。
私はきっと、3の設定がなければルックにここまではまれなかったと思う。
3嫌いな方も多いようですが、へびは大好きですね。
3最高。
もちろん、ルックは復活します。(断言/←ねぇよとよく言われますが)
6あたりで出てきてくれると信じています。
5はファレナらしいので。
早く3の続きが見たいよー!


あ、「魂還り」は「たまがえり」と読んでくださると嬉しいです。