ヘンテコな太陽

 

「バブル−−−−−−−−−−−−−−−〜〜〜〜〜〜っ」


 水槽の中にいるバブルを悲痛の声で叫び呼んだのは長兄メタルだ。バタバタと向かってくる音を聞きながら、面倒な予感をひしひしと感じ奥につながる海へ逃げようかと思案する。その数旬の迷いの間に、クイックさながらの俊足でメタルはバブルのいる水槽にたどり着いてしまった。

「・・・ちっ」

「バブルゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!」

「・・・なに」

「いいから今すぐそこから出なさい!!」

 ふぅ、と排気を吐き出すと泡がぶく、と水面へ向かう。それに続くようにバブルも不自由な陸へと上がる。すぐ横に置かれているタオルで装甲を拭きながら、チラと視線をメタルにやる。見れば耐え切れないとばかりにアイカメラから冷却水をどばどば流しつつぐわしと肩をつかみ揺さぶる。

「バブルゥゥゥゥゥゥゥ!!!辛かったらお兄ちゃんに何でも言うんだぞ!!一人ぼっちじゃないからな!誰も笑ったりしないんだからなぁぁぁぁぁぁ」

 この長兄は突然何を言い出すのか。もともとの眠たげなアイカメラをさらに閉じ、半目で見やる。ふと、メタルの腕に絡むコードが目につく。その先には引きちぎられたマウス。そして、かすかに聞こえるパソコンから流れるバブルのイメージソング。


「・・・・・・・・・」


 なんとなく悟ったバブルはもはや面倒くささMAXだ。

「あのねぇ。あれって全部本当じゃないよ?現に今、陸に上がってるでしょ」

「無理しなくていいんだぞ?何でも言うんだ。お兄ちゃんは何があってもお前の見方だぞ?」

「話聞けや」


 実を言えば、バブルは自分が造ったのではないかと思うほどあの歌のことがわかった。

 あれは、昔の自分だと。何もかも嫌になって、海の底へ逃げて。


 でも、太陽が、現れた。


 博士もバブルを改良し、足は不自由ながらも陸で活動できるように施した。

 すぐ横でぎゃあぎゃあ喚くメタルを見る。

 この間抜け面が太陽だなんて。


(とっくに僕は、メタルに救われているのになぁ)


「あのね、僕は大丈夫なの」

「あああまたそんな」

 どこまでも終わりそうにないメタルに、遮るようににっこりと微笑んだ。

 

「ね?おにーちゃん」

 

 フラッシュにタイムストッパーをかけられたかのようにカチリとフリーズしたメタルを放って、のそのそ水中へと戻る。
 否、戻ろうとした。

 あと一歩というところで、後ろから抱き上げられる。言わずもがな、フリーズから復活したメタルだ。

「ちょっと!?」

「お兄ちゃんよーーーーくわかった。お兄ちゃんが悪かったな」

「はぁ?」

「だからベッド行こうな。お兄ちゃんいろいろ限界だぞ」

「メタル!!」

 

「違う」

 

 バブルの呼びかけにキリッとした目線を向ける。

「お兄ちゃんと呼びなさい」

「あああぁあぁぁあもうこのブラコンがぁぁぁあぁ」

 

 

 

 


 

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