あれから数年。メタルとバブルの仲は至って良好だ。それぞれ妙な成長を果たしてはいたが。
「ねぇ!待って!!」 随分と久々に聞いた台詞だった。振り向けば、切羽詰ったような女。 「メタルはどこ!?」 「ありゃまー。懐かしい言葉聞いたね」 この程度では、もうバブルが落ち込まないことを知っている。だから思ったままの反応ができるのだ。 数年前、メタルとバブルのわだかまりがすっかりなくなり、二体で街へくることも増えた。そしてメタルは、唯一を決めたのだと告げる。告げて、告げて、告げまくって、どんだけいるんだとバブルの機嫌がすこぶる悪くなるくらいひたすら告げ続けた。結果、諦めたり返り討ちにされる輩から噂は広まり、この台詞も聞かなくなって久しかった。 「やっと留学から帰ってこれたのに、メタルと連絡がつかないの!ねぇあなた達なら知ってるんでしょう!?」 「いや・・・まぁ、なんつーか」 「ああ、メタルッ」などと自分の腕を抱く。 フラッシュはチラリと視線をバブルに向ける。こんな女放っておこう。お前も切れるなよ?と通信する。それにバブルもどうでもよさ下に返事をした。しようとした。 『うん。わかっ』
「はぁ?」
通ってもいない血の気が一瞬で引いた。とは、後のクラッシュとフラッシュの証言である。 「誰のだって?」 「私のよ!メタルは私のなんだから!」 「自分のものの場所がわからないの?笑っちゃうね」 「なによ。あなたもメタルを探しているの?二人に取り入ってメタルの居場所を聞き出そうとしているのね!」 「メタルは僕だから、そんな必要ないよ」 「ふん!自分は居場所を知っているとでもいうの!?」 嘘おっしゃい。そんなわけないわ。と決めてかかる女にバブルは微笑む。そこで女ははっとしてバブルの容姿に気がついた。その造形の美しいこと。思わず顔を赤らめて見惚れたことを恥じるようにブンブン頭を振る。その様子を横目で見ながら女に聞こえるように通信をつなげた。
その呼びかけに女は驚いて周囲を見渡すがメタルの姿はもちろんない。そのうちに通信とわかる音声が耳に届いた。 『ん?バブルか。どうした?はっ!ま、まさか何かあったn』 「今すぐきて。5分以内」 『え??それはちょっとーお兄ちゃん無理かなー?』 「こいって言ってんの。僕が」 『バ、バブル?』 そこで通信にクイックを加えた。 「クイック」 『ん?どした?』 「メタル引っ張って5分で僕のところに連れてきて」 『うぇ!?いや、できなかないけど・・・』 『バブル!そんなことしたらお兄ちゃん壊れちゃうぞ!』 「黙れ歯医者」 『クイック、クイック。バブルどうしたんだ?何で怒ってるんだ!?』 『知らねーよ!オレが聞きたい!いや、やっぱ聞きたくない!』 「じゃ、5分ね」 『待っ』 ブツリ。通信は切られた。
「5分待ってね」
きっかり5分後、クイックはいつもより排気の間隔を狭めつつもこの場へたどり着いた。 「あ〜〜〜〜〜〜っついた!!!」 「お疲れ様。ところでメタルは?」 「あそこ」 クイックの指差すほうには、ロープを胴に巻きつけて倒れるメタルの姿。ロープの反対端はクイックが握っている。 「メタル!!」 駆け寄るのは女。そんな足バブルにはない。 その隙にフラッシュは手招きでクイックを呼ぶ。そこ(バブルの隣)にいては怖い思いをする。 「メタル!メタル!!」 倒れるメタルの肩をつかみ激しく揺さぶる。オーバーヒートを起こしていたメタルはハッと気がついた。 「バブル!!・・・・・・ん?君は・・・?」 「ああメタル!会いたかった!!」 目に涙をたたえて女はメタルに抱きついた。 「君は」 「メタルは自分のだって言うんだよね、彼女」 「なに!?俺は博士の」 「あ?」 「あ、いや、その、博士とバブルのものだ」 「嘘よ!」 「嘘って」 「だってあの夜、あんなに激し」 「ああぁああぁぁあーあーきこえなーーい」 「・・・・・・あなたメタルよね?」 「そうだが」 「それに何よ。博士のものって!博士ってご老人?男だけじゃ飽き足らずご老人にまで手を出したの!?」 「ブッ」 思わずクラッシュとクイックが吹き出した。 「バブルって!?そこの車椅子のロボットよね!?」 「・・・・・・ああ」
「なによロボットの癖に!車椅子なんておかしいわよ!失敗作なんじゃないの!?」
その沈黙をバブルは笑い声を上げて破った。 「あははははははっははははははは!!!」 「な、なによ・・・」 「あははっ、っあー可笑しい」 そして優雅に笑みを浮かべる。
女が憤怒して怒鳴って見せても、泣いて許しを請うても。メタルは声を荒げるでもなく女を攻め立て、ボロボロになって気が済んだころ解放した。 「ごめんなバブル。辛い思いをさせた・・・」 「うん。なんていうか今更だよね」 「ぐぅ・・・っ」 そんな彼らを見つめる三体は若干疲れた様子だった。一部始終見ているとこんなにもエネルギーを消費するものなのか。 「なんていうか、もう、これはキツイだろう。帰りたい・・・」 「うん・・・泥沼だったねぇ」 「つか、昼ドラみてぇー」
車椅子を押しながら、メタルは口角を緩ませてバブルを見る。 「嫉妬してくれたんだろう?」 「・・・・・・」 「嬉しかったぞ」 「・・・・・・」 「バブル・・・」 「嫉妬の原因があれじゃぁね」 「うっ」
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