僕等の関係に、あいはなかった。

 必要なかったから。

 でもそれは心地よいもので、

 知れば離れがたいものだった。


あい

 

「…テイル」

「あ?なんだよ」

 朝、シーツにくるまったルックが目を覚ました。テイルは既に起きていたようで、起きたときの格好のまま上半身を起こしルックの髪を触っていた。

 目を覚ましたルックはぱちぱちと瞬いてテイルを見る。視線を下ろし、その腰に両の腕をまわして足に頭を乗せる。ルックはまるまって目を閉じた。

「…おい」

「なぁに」

 長い睫毛に縁取られた目は閉ざされたままに返事をする。

「どうかしたのか」

「いとしい」

 美しいその姿で呟かれた囁きは、まるで寝言のようで。しかし、目こそ閉じているがルックの意識ははっきりしていた。

 ぎゅ、と更に込められた腕に触れ、テイルはその者の名を呟く。それに、ルックはテイルの腹に頭を押しつけた。

「あいしてる」

 テイルはため息を一つ吐き、その手を茶色の頭に乗せた。




 「愛」など知らなかった。それは、彼に与えられるものではなかったから。

 「愛」を知れなかった。それがどんなものかわからなかったから。

 テイルに抱かれながらも、ルックは意味を知らず闇に横たわる。

 闇の中にいたルックを光りで照らしたのはテイルだった。

 ルックは「あい」を知る。

 心の底で、「あいしてる」を欲していた自分に気付いて。

 貰った「愛」を、受け取った。

 


「いとしい、いとしい、闇の御子」

「…風の愛し子にゃ言われたかねぇよ」

 そう、やわらかな髪に口づけた。

 








くっついた後のルックはテイルにベタぼれ設定だったり。
でも、ラーグ編もベオーク編も、テイル編も全部3には繋がる予定です。