激しく降り注ぐ天の恵み。時としてそれは、侵した罪を購えとばかりに命を奪う。
「皆流れてしまえばいいのに」

「あ?」

「別に。何でもない」

珍しく饒舌なルック。もちろん、本人にしてはだが。他の者と比べれば、これでも口数は少ない。
テイルは窓辺に肘をつき、外を見るルックを眺めた。

「雨嫌いなのか」
「別に…」

そう言いつつ窓を開けるルック。
閉じていても地や壁を叩きつける雨音は大きかった。外と内を隔てるものがなくなり、先ほどよりも大きな音が雨と共に室内へ入り込む。

「濡れるぞ」

「うん…」

聞いているのかいないのか。ルックは窓を閉めようとしない。
側にある引出しの中から、やや濃いめの煙草を取り出す。それを慣れた手つきでくわえ火をつけた。
「…嫌なら出てけば」

憮然とした顔のテイルを横目で一瞥し、外へと煙を吐き出した。

「お前15だろ。いつから吸ってんだ」

解放軍が活動を始めてからおよそ二年。ルックが本拠地に訪れたばかりのころは、この姿を見ることはなかった。

「さぁ…去年くらいじゃなかったかな」

「伸びねぇぞ」

「…僕?伸びないよ」

ルックの姿は、この世に生を受けてから変わらない。

沈黙。聞こえてくる雨の音。濡れるのを厭わぬルック。
破るのはテイル。

「雨好きなのか」
「…」

「…」

「…、うん」

心なしか、ルックが笑った気がした。
立ち上がったテイルはルックへと歩み寄る。
くわえた煙草を奪い、何と振り返ったルックにキスをする。



「…苦い」

「…お子様」

「あ゛ぁ?」

返してと煙草をテイルの手から抜き去る。
それをくわえる前に、何を思ったのかはたと動きを止めた。
「…?」

テイルを見上げ、触れるだけのキスをした。

「!」

驚いた顔のテイルを気にするでもなく、外へと視線を戻し煙草をくわえた。

それは、
雨の日の気紛れ。





携帯で友達と小説を送りあっていた時のものです。
お題が確か「儚くてホロリとくるような...」だった気もします。
どこがだ。
そのお題で最初オリジナルを書いたのですが、坊ルクでも!
と言われて書いてみたら明らかに人選ミス。
まぁいいや。